映画『レ・ミゼラブル』の感想とあらすじ
【目次】
【作品情報】
あらすじ
ヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台として知られるパリ郊外のモンフェルメイユには低所得者や移民たちが多く暮らしており、治安が悪かった。新たに犯罪防止班に加わった警察官のステファンは、同僚たちとパトロールするうちにいくつものグループが一触即発の状態だと気づく。
キャスト
- ダミアン・ボナール(ステファン)
- アレクシ・マナンティ(クリス)
- ジブリル・ゾンガ(グワダ)
- イッサ・ペリカ(イッサ)
- アル=ハサン・リ(バズ)
- スティーヴ・ティアンチュー(市長)
- ジャンヌ・バリバール(警察署長)
【レビュー】
感想
フランスの実情を暴いた映画といえば、私の中には…移民、特にアルジェリア難民に対する差別をメタ的に暴き出したミヒャエルハネケ監督の『隠された記憶』。そして、難民としてやってきた疑似家族のフランスでのギャングに囲まれた壮絶な生活を描いたジャックオディアールの『ディーパンの闘い』が思い浮かぶ。
本作も同じように、レ・ミゼラブルの舞台となったモンフェルメイユ地区のリアルを描いた犯罪スリラー映画。一見、デビッドエアー監督の『エンドオブウォッチ』的な映画だが、本作の根底に流れるのは、昨今のネオレアリズモの潮流を汲む社会派である。
作為的な物語では、誰かが悪役であり、誰かが正義役であることが多い。最近ではヒーロー映画でさえ、その構図は全くと言って良いほど無くなってきた。しかし、映画を見ている人の中には、そうした状況を理解せず、未だに勧善懲悪みたいな姿勢で鑑賞している人間も少なからずいる(日本で本作を見るような人はそんなことないと思うが)。『万引き家族』の時なんかは、そんな人が多く、的はずれな批判をされていることも多々あった。
何が言いたいかというと、本作では、悪い人は誰一人いない。見方によっては一部当てはまる人間もいるが、特に本作に出てくる子どもたちは何も悪くない。暴力や貧困による苛立ちが蔓延り、それが当たり前な社会になっているから、子どもたちはその環境に順応してしまい、やがて我らが言う「クソガキ」や「犯罪者」になってしまう。
アメリカにおいて、エルサルバドルからの移民の少女がギャングによってリンチされ殺害された事件があった。その犯人の主犯格はギャングのメンバーの彼女。動機は浮気だそうだ。普通の女の子が普通の女の子を浮気の理由だけでナイフで何十回も刺し、リンチを仕掛け、遺体を捨てた蛮行の背景には、暴力が肯定されるギャングの社会があるからだとされている。それも、南アメリカ大陸からの移民で貧困に苦しんでいるからこその社会である。カリフォルニアも、IT企業の成長によって、地価があがり、貧困の人が家に住めなくなっているという問題もある。これは、フランスだけに起こっているのではなく、どこにでも起こりうる危険な物語なのだ。
また、昨年公開されたイタリア映画の『ドッグマン』では、のび太のような優しい男が、ジャイアンのような男に服従されることを余儀なくされ、結果的に暴力のメカニズムに苛まれていく様が描かれていたが、まさに本作も同じ。それで言えば、本作のクリスというヤンチャな警官は、暴力の社会に順応しすぎたせいで、あそこまで暴力的な性格になってしまったのだろう。家に帰れば普通の父親。グワダもそう。それが、暴力の社会でこうも歪んでしまう。子どもだけでなく、大人たちまで狂ってしまうのだ。
経済格差が大きく広がっている現代社会。それによって、子どもたちは、学力だけでなく、道徳や倫理までもが欠如した人間となっていき、それが悪循環となっていき、状況は益々悪くなっていく。日本でも、経済格差の影響で、まともに教育が受けられない子どもが増えてきている。また、東京大学の学生の親の殆どが高所得=金持ちであるということがデータで判明しており、だんだんと格差が広がってきている。「最後の追跡」でクリスパインが言っていたように、貧困は後の世代に受け継がれていく。そして、受け継がれていけばいくほど、苦しくなっていく。もうどうあがいても抜け出すことができなくなってしまう。個人的な意見としては、資本主義は間もなく革命なり何らかの形で崩壊していくだろうと思う。バーニーサンダースの盛り上がりようがまさにそれを示している。
本作のイッサくんの歩く姿や背中、表情が堪らなく悲しかった。決して悪い子ではないのになってしまう。そんな社会が憎い。だからこそ、貧困からの脱却は、ただその人々の生活が豊かにするだけではない。社会システムそのものを改善していくことにまでつながるし、将来を担っていく子どもたちがより社会に貢献していくシステムができるということまでをお偉いさんには考えてほしい。
映画的に言えば、スリラー描写の描き方はとてつもなく良いし、あらすじを読んでから見に行ってしまうと、前半の展開の遅さが少し気になってしまうこともあるかもしれないが、それにしても、警官たちが直面する様々な事態にヒヤヒヤすること間違いなしで、エンターテインメントとして十分に見応えがある。タイトルの意味の伏線回収も大変考えつくされており、とにかく素晴らしい。
主人公が異動で配属されたばかりの真面目な警官だというところも良かった。社会に順応してしまった仲間の警官と、まだ順応していない主人公の対比と一人だけ浮いてしまっている感覚が、前述した社会構造のメッセージ性を体感的に伝わりやすいようにしている。また、ちゃんと本作を作った監督の目的や意志が誰にでもわかるように提示されているので、難しくなく、かなり親切。目の肥えた人でなくても、伝わる。
おすすめ度
映画『レ・ミゼラブル』のおすすめ度は4.3点(5点満点)。
第92回アカデミー賞の国際長編映画賞のノミネートで、2019年のカンヌ国際映画祭の審査員賞と2020年のセザール賞の最優秀作品賞の受賞作ということで、自ずとハードルが上がっていた。
ラジ・リ監督の幼少期時代の実話がベースで、バズは監督の息子が演じている。
団地が舞台となっているのが面白い。貧困層が団地に住まざる得ない現状はフランスも同じ。ドローンの映像を交えながら、緊迫感のある映像。ラストシーンは非常に恐ろしくて、胸につまるシーンだった。
移民だから悪いやつ、という事は決して無い。社会構造や政治が、移民やマイノリティに対し非常に冷淡であり、犯罪を犯さざる得ない状況が作り上げられているのかもしれない。
【おまけ】
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