映画『アド・アストラ』の感想とあらすじ
【目次】
【作品情報】
あらすじ
地球外知的生命体探求に尽力した父(トミー・リー・ジョーンズ)の背中を見て育ったロイ・マクブライド(ブラッド・ピット)は、父と同じ宇宙飛行士の道に進むが、尊敬する父は地球外生命体の探索船に乗り込んだ16年後に消息を絶つ。あるとき、父は生きていると告げられ、父が太陽系を滅亡させる力がある実験“リマ計画”に関係していたことも知る。
キャスト
- ブラッド・ピット(ロイ・マクブライド)
- トミー・リー・ジョーンズ(H・クリフォード・マクブライド)
- ルース・ネッガ(ヘレン・ラントス)
- リヴ・タイラー(イヴ)
- ドナルド・サザーランド(トム・プルーイット大佐)
【レビュー】
感想
Ad Astraはラテン語。英語ではTo the stars
いわゆるSCI-FIのワクワク感は殆どなく、完全なヒューマンドラマという位置付けで見たほうが良い。そして、ブラピ好きは、PLAN Bとしてのブラピが見れる。
ストーリーはともかく、サウンドや演出、ビジュアルがとてつもなく好き。宇宙空間の描き方や、映像の立体感、カラーコーディネートが最高。これは、『インターステラー』の撮影監督であるホイテ・ヴァン・ホイテマだから、『インターステラー』同様に兎にも角にも映像美。
赤を基調としたシーンであったり、奥行きを感じさせる照明、幅の狭い通路が最高。それに対して、宇宙空間は広々としているが、主人公の内側にフォーカスしているため、どこか虚無感や狭さを感じさせる。見事に主人公の性格と孤独が反映されているビジュアルであった。
そして音楽とストーリー。これはドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『メッセージ』に影響を受けたのではと感じられた。『メッセージ』での、マックス・リヒターのOn the Nature of Daylightが最高に好きだったので、本作も似たような音楽だなと思ったら、まさかのマックス・リヒター本人が作曲。映画の壮大感、宇宙という無機質な空間に広がる人間味を彷彿とさせるようなメロディ。ヒューマニズムを感じられた。
ストーリーは、上記の『インターステラー』や『メッセージ』、『ファーストマン』に倣った、ヒューマンドラマ寄りの宇宙モノ。宇宙飛行士という感情を捨てなければならない冷酷な職業、広くて無機質な宇宙空間と、一人の人間の冷淡さの裏に潜む心の傷、孤独、苦しみのコントラストか非常によく効いていた。プロットこそ、SFではなくても描けるものであるが、このコントラストを生み出すために宇宙モノにしたのだろうと思われる。
本作での父親は、憎むべき相手であり、愛すべき相手であり、なり得るかもしれない自分自身のメタファーでもある。実際に、父親が行った行動と同じことを主人公はすることとなる。そして、主人公の表面には出てこない心情をモノローグで語り始める。ある意味、父との対峙というテーマではなく、自分自身と戦うというテーマである。
また、ブラピがジャパンプレミアの際放った言葉がある。それは、「お互いに優しく」。この言葉の意味を探ってみた。主人公はうまく人間関係を築くことができず、それから逃げるように宇宙へと旅立つ。そして、冒頭文に「対立と希望」という言葉が出ていることから、主人公の周りを断つ性格は、現在の分断的な世界情勢のメタファーとなっているのではないかと考えた。
そうなると、同じく分断された世界を見直そうと訴えかける『メッセージ』もとい『あなたの人生の物語』とも共通する面がある。さらに、宇宙から地球を見ることの、世界を俯瞰するというメタファーも持ち合わせていたのではとも考えさせられる。
一応カーチェイスなどの娯楽性に富んだシーンもあったりして、エンターテインメント要素もあるが、基本的に静謐な物語展開ではあるので、退屈したということも否めない。
キャスティングに関してはめちゃくちゃ面白いと感じた。それは、父親のトミー・リー・ジョーンズは、言わずもがな『スペース・カウボーイ』に出ていたし、リヴ・タイラーは『アルマゲドン』に出ていた。ブラピに関しては、言うことがないというか、言えばおこがましいレベルで最高の演技。とにかく顔。
全体的に他のSFや宇宙ものから手繰り寄せた感じの要素が多くて面白いし、アーティスティックと知性を両立したような感じで、なかなかよかった。
おすすめ度
映画『アド・アストラ』のおすすめ度は3.5点(5点満点)。
太陽系で繋がる、父と子の壮大な物語。演技や映像は本当に素晴らしい。全体的に重厚な印象。
シーン毎に隠されてるメッセージを観客側が読み取りながら観ていくタイプの映画だと思う。
トミー・リー・ジョーンズが宇宙にいても全く違和感を感じない(どころか当たり前)と思うのは日本人だけ?
ブラッド・ピットの顔アップも多いのでファンの方なら満足できるかもしれない。
【おまけ】
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